このところ、有名人のブログや掲示板に誹謗中傷や脅迫的な書き込みを行って検挙されるケースが見られます。根も葉もないウワサを真に受けた人たちが集団的に攻撃的な書き込みを行い、いわゆる「炎上」に至らせるケースも多くなっています。
こうした名誉毀損や脅迫行為は、民事的には不法行為(民法709条)、刑事的には名誉毀損罪(刑法230条)や脅迫罪(刑法222条)に該当する可能性があります。
被害を受けたときの対応としては、民事的には、ブログや掲示板の管理者やホスティング業者に対して記事の削除を求めるとともに、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求によって発信者を特定して、損害賠償などの請求を行うという方法が考えられます。
この場合、掲示板管理者などの下にはIPログ情報しかないのが通常ですから、その開示を受けたうえで、WHOIS検索(IPログの接続情報を調べるサービス)によって判明するISP(インターネットサービスプロバイダ)事業者に対して、第二段階の開示請求を行うことになります。
ISP事業者の下には、問題の投稿の日時に当該IPアドレスを付与した契約者に関する情報があるので、これによって投稿者を特定することができます。その際、ISP事業者がIPログ情報を保存する期間は、短いところでは2カ月程度しか保存されないとも言われていますので、迅速に対処する必要があるでしょう。
情報の流通による権利侵害が明白と事業者側が判断できない場合には裁判によることになりますが、第一段階の掲示板管理者などに対する場面では裁判所も開示の仮処分を認める傾向にありますので、短期間に最終のISP事業者の下までたどり着けることが多いと言えます。
この点、「2ちゃんねる」などの一部の掲示板では、民事裁判手続きを事実上無視しているため、発信者情報を遡ることが困難になっています。こうした掲示板の管理者に対しては、適正な運営のために行政的な関与を立法で検討する余地もあると私は思っています。
また、せっかくログを遡ってみても匿名利用可能なネットカフェからの発信では個人を特定できないので、ネットカフェ側で入店時の本人確認をしっかり行う必要が高く、行政側の対応に引き続き期待したいところです。
ところで、被害が重い場合などは、刑事事件に発展する可能性も高くなりますので、警察への被害届提出や告訴を検討することになるでしょう。
この点、「2ちゃんねる」などでは民事裁判手続きが無視されるために、一般的に刑事手続きによらなければならない現状があり、刑事法の謙抑性に照らすと真に憂慮される状況となっています。
そもそも人権は、他者の人権を侵害してまで保障されるものではなく、表現の自由とて、他者の名誉権や私生活の平穏を害してまで濫用してよいものではありません。その一方で、表現行為に対する警察当局の関与が頻繁に行われることもまた、個人の自己実現や民主制に不可欠な表現の価値に照らして、本来望ましいことではないでしょう。
自由な表現の場を提供するという名の下に、濫用的表現の温床を提供し、結果として警察当局の関与を常態化するような事態は、およそ表現の自由の意義を理解しないことと私は思っています。表現の自由の保障のあり方を多くの方々に考えていただきたいと思うゆえんです。
悪質で被害が重い場合は警察に「被害届」を出す
※すべて雑誌掲載当時
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大阪府行政書士会 旭東支部所属 (大阪市都島区・鶴見区・城東区・旭区) 東洋法務総合事務所の B l o gへようこそ。
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