国土交通省が、不動産開発事業における環境性能向上の取り組みについて事業者にアンケートした結果、事業者が重要と考えている環境性能向上の取り組みと、実際に環境改善のために投資している分野に隔たりがあることが分かった。騒音や断熱設備など室内環境の改善と自然エネルギー利用設備などエネルギー分野の取り組みが重要と考えられていながら、取り組み水準が低いため、国交省は両分野を資金支援の対象とするよう民間都市開発推進機構に求める考えだ。
国交省は、「不動産開発事業に環境性能向上に資する公的金融支援に関する調査」として、売上高10億円以上で資本金1億円以上の不動産事業者240社にアンケートした。有効回答数は62社。
建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)の評価項目を基に、重視している環境性能分野を聞いたところ、「室内環境」「サービス性能」「エネルギー」「敷地外環境」の4分野を重視する事業者が多かった。
特に、エネルギー分野の設備システムの高効率化については77.4%が「非常に重要」と答えた。室内環境分野の温熱環境や、エネルギー分野の建物の熱負荷抑制についても、それぞれ「非常に重要」との回答が6割を超えた。
ところが、事業者の実際の取り組みについては、「室外環境」「エネルギー」「資源・マテリアル」の各分野の取り組み水準が低かった。エネルギー分野の効率的運用や自然エネルギーの利用、資源・マテリアル分野の水資源保護などは「あまり取り組んでいない」が3割前後と多く、「室内環境」も「あまり取り組んでいない」が2割弱に上った。
これらを総合すると、エネルギー分野の自然エネルギー利用や効率的運用は重要度が高いものの、取組水準が低いというギャップが生まれている。室内環境分野の温熱環境や水・視環境についても、比較的ギャップが大きくなった。
重要度も取組水準も低い「資源・マテリアル」「室外環境」は、購入者に評価されにくいことが低さの理由で、公的支援しても普及しにくいとみられる。ただ、事業者の重要度が高いものの取組水準が低い分野については、公的に支援すれば、取り組みの価値を入居者や購入者に理解してもらえる可能性が高い。
公的金融支援の方法としては、都市開発事業の施行に必要な公共施設や都市利便施設、建築利便施設の費用の一部を民間都市開発推進機構が負担する制度がある。ただ、今回、ギャップが判明した室内環境やエネルギー分野については、支援対象となっていない。室内環境分野では、騒音・遮音・吸音設備や断熱・空調設備、昼光利用設備、自然換気設備などの設置、エネルギー分野では、熱負荷抑制設備や自然エネルギー利用・返還設備、設備の高効率化設備の設置などが考えられる。
国交省は、これら分野を支援対象とするよう民都機構に求める考えだ。ギャップのある分野に支援対象を広げることで、さまざまな分野の取り組みが進むよう促したい考えだ。
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