Archive for » 5月, 2011 «

国土交通省が、不動産開発事業における環境性能向上の取り組みについて事業者にアンケートした結果、事業者が重要と考えている環境性能向上の取り組みと、実際に環境改善のために投資している分野に隔たりがあることが分かった。騒音や断熱設備など室内環境の改善と自然エネルギー利用設備などエネルギー分野の取り組みが重要と考えられていながら、取り組み水準が低いため、国交省は両分野を資金支援の対象とするよう民間都市開発推進機構に求める考えだ。

                
 国交省は、「不動産開発事業に環境性能向上に資する公的金融支援に関する調査」として、売上高10億円以上で資本金1億円以上の不動産事業者240社にアンケートした。有効回答数は62社。
 建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)の評価項目を基に、重視している環境性能分野を聞いたところ、「室内環境」「サービス性能」「エネルギー」「敷地外環境」の4分野を重視する事業者が多かった。
 特に、エネルギー分野の設備システムの高効率化については77.4%が「非常に重要」と答えた。室内環境分野の温熱環境や、エネルギー分野の建物の熱負荷抑制についても、それぞれ「非常に重要」との回答が6割を超えた。

                   
 ところが、事業者の実際の取り組みについては、「室外環境」「エネルギー」「資源・マテリアル」の各分野の取り組み水準が低かった。エネルギー分野の効率的運用や自然エネルギーの利用、資源・マテリアル分野の水資源保護などは「あまり取り組んでいない」が3割前後と多く、「室内環境」も「あまり取り組んでいない」が2割弱に上った。
 これらを総合すると、エネルギー分野の自然エネルギー利用や効率的運用は重要度が高いものの、取組水準が低いというギャップが生まれている。室内環境分野の温熱環境や水・視環境についても、比較的ギャップが大きくなった。
 重要度も取組水準も低い「資源・マテリアル」「室外環境」は、購入者に評価されにくいことが低さの理由で、公的支援しても普及しにくいとみられる。ただ、事業者の重要度が高いものの取組水準が低い分野については、公的に支援すれば、取り組みの価値を入居者や購入者に理解してもらえる可能性が高い。

                      
 公的金融支援の方法としては、都市開発事業の施行に必要な公共施設や都市利便施設、建築利便施設の費用の一部を民間都市開発推進機構が負担する制度がある。ただ、今回、ギャップが判明した室内環境やエネルギー分野については、支援対象となっていない。室内環境分野では、騒音・遮音・吸音設備や断熱・空調設備、昼光利用設備、自然換気設備などの設置、エネルギー分野では、熱負荷抑制設備や自然エネルギー利用・返還設備、設備の高効率化設備の設置などが考えられる。
 国交省は、これら分野を支援対象とするよう民都機構に求める考えだ。ギャップのある分野に支援対象を広げることで、さまざまな分野の取り組みが進むよう促したい考えだ。

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日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームの内容を知ることで得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2011年6月号に掲載した内容の一部を紹介します。


 マンションに住む60歳代のAさんは、自宅の“居ながらリフォーム”を知り合いのB工務店に約200万円で依頼した。主な目的は間取りの変更や内装の更新だった。バリアフリー改修は含まれていなかった。

 B工務店の大工が、施工中のあるときAさんに「手すりがあれば生活が楽になるよ。取り付けてあげようか」と話しかけた。Aさんはなるほどと思い、「お願いします」と口頭で返事をした。

40万円の増額請求

 後日、B工務店からAさんに請負代金の請求書が届いた。そこには手すり一式の費用が追加され、金額は約240万円に増えていた。工務店側は、大工の提案をAさんが受け入れた口頭でのやりとりで、手すりの追加工事の契約が成立したと理解していた。

 一方、Aさんは「取り付けてあげようか」という大工の言葉を無償のサービスの申し出と受け止めていたので、増額請求に驚き、怒った。工期が予定より延びていたこともあって、請求を受け入れる気になれず、消費者向けの住宅相談窓口に助言を求めた。

(イラスト:勝田 登司夫)
(イラスト:勝田 登司夫)

 

 相談窓口の担当者はAさんに、B工務店からの増額の請求は拒否してもよいとアドバイスした。担当者はその根拠を、「手すりの取り付けは有償だと大工が説明しなかったのなら、Aさんはお願いすると言っても追加工事の契約に同意したことにはならないからだ」と説明する。

 大工が有償の工事だと説明したかどうかについては、AさんとB工務店が“言った・言わない”で対立する恐れもある。「書面による契約が紛争の予防に有効であることは明白なのに、住宅のリフォームではいまだに口頭で済ませるケースが多いようだ」と、相談窓口の担当者は苦言を呈している。

 このケースでは契約書がなかったうえに、リフォームの依頼主と工務店とのやりとりに大工が介在したことで、互いの意思が正確に伝わりにくくなった可能性もある。依頼主が職人と接する機会が多い“居ながらリフォーム”では起こりがちなことだ。リフォーム「でも」というよりは、「だからこそ」、契約は少額でも書面で行うのが賢明だろう。

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街中の歩道で、工事現場やスーパーの駐車場入り口などを通りかかると、いきなり警備員が進路に立ち、両腕を広げる身ぶりで、歩行者に停止を求めてくることがある。これはいうまでもなく、車両が歩道を横切ろうとしているため、歩行者に危険を知らせ、身の安全を確保するための行為だ。

しかし本来、歩道は歩行者が優先であり、警備員が事故を防ぐために止めるべきなのは人ではなく車両だ。歩行者が多く、車両を通行させるためにやむをえず行っている場合が多いが、時には警備員の雇い主や、その顧客の車両を「身内びいき」しているように見えることもある。

このほか、道路工事などでも警備員が車両の通行を誘導することがある。これらの行為には法的な強制力はあるのだろうか。

警備業法15条には「警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意する」とわざわざ書いてある。つまり、警備員の停止指示に法的強制力はなく、「停止のお願い」にすぎない。交通整理の警察官が停止を命じれば、法律上の強制力が生じ、赤信号と同じ扱いになるのとは対照的である。事故防止のための「お願い」は、受け入れることが望ましいが、「お願い」が不合理であるならば、従わなくても違法ではない。

では、警備員の停止指示に協力しなかった結果、交通事故が発生した場合、損害賠償の責任関係に影響はあるのだろうか。

交通事故の問題に詳しい横張清威弁護士によると、「協力しないことによって事故が発生した場合、過失相殺で不利になる可能性がある」と説明する。

たとえば、車両が駐車場などの私有地から公道へ入る際に、直進車と衝突した場合、原則として過失割合は、進入車と直進車で「8対2」。すなわち、修理費用や治療費が10万円かかったのなら、進入車の運転手が8万円を負担することとなる。

「ただし、警備員の停止指示に逆らって公道に入り、同じように直進車と衝突したのなら、これは進入車の『重過失』として扱われる可能性が高くなる」(横張弁護士)

重過失とは、故意に比肩するほど重大な過失で、酒酔い運転や居眠り運転なども含まれるが、重過失運転での事故では、過失割合が2割程度上がる。つまり、進入車と直進車とで「10対0」になるわけで、進入車が事故の全責任を負う可能性がある。

ちなみに、警備員が明らかに不合理な誘導(直進車があるのに進入を指示するなど)をした結果、衝突事故が起こった場合、

「過失割合は変わらないが、警備員と進入車の運転手との共同不法行為(民法719条)が成立し、警備員も進入車の責任を一部肩代わりする可能性がある」(同)

ここでいう警備員が、たとえばガソリンスタンドの店員だとしても、事情は同様である。

では、歩道の歩行者が警備員の指示に従わず、歩道に進入してきた車両と接触した場合はどうなるのだろうか。

保険会社の交通事故査定担当者のバイブルともいわれる「別冊判例タイムズNo.16」(判例タイムズ社)によれば、

「歩道等を通行する歩行者の保護は絶対的といってよく、横断歩道上と同様に、原則として過失相殺を考えなくてよい」

とある。歩行者が意図的にぶつかった場合は論外だが、歩行者に「重過失」があったとしても、過失相殺で不利になる可能性は極めて小さい。

なお、いうまでもないが、以上の話はあくまで法律上の権限と責任の話であり、事故を防止するためのものではない。仮に、たとえば警備員の誘導が歩行者より車両を優先しすぎていたとしても、物理的に立場が弱い歩行者は、怪我をしないためには誘導に従うしかないのだ。

過失割合の例

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