―― 多くの識者が、これからは中古が住宅市場の中心になるとみています。先生も同じご意見ですか。
中城 日本は技術革新のスピードが速い。新しいものほど性能が高いので、そのために住宅も新築を選ぶ傾向にあったと思います。新しい家を建てるには新しい土地が必要ですから、郊外や埋め立て地へと住宅街が広がっていきました。
しかし、高齢化社会を迎えて、多くの人が、若い時に新築で買った家に生涯住み続けるのは難しいと気付き始めています。家は“一生もの”ではなく、いずれ住み替えるものだという意識が生まれてきた。家を買うことがゴールではなくプロセスだとすれば、中古住宅が市場に流通する仕組みが必要です。買う人も、“出口”を考えて住宅を選ばなければならないでしょう。
また、ここ数年、政府は“200年住宅”を旗印に、住宅の長寿命化を目指しています。家を長持ちさせ、世代を超えて使えば、社会全体として住居費の負担が減り、廃棄物などの環境問題対策にもなるからです。家が200年持てば、その間に一度や二度は市場の洗礼を受けることになる。そのときにちゃんと買い手がつくかどうかが問われるでしょう。
―― 「買い手がつく」住宅を選ぶためには、どんなことに注意するべきですか。
中城 まず、第一は立地ですね。これからは人口が減少して、都市のコンパクト化が進むでしょう。そうなると、都心から遠い郊外の住宅は売りにくくなる可能性が高い。
建物の規模やつくりも注意点です。大きすぎたり小さすぎたりすると売れにくい。イギリスでは、規模の大きな戸建て住宅を分割して複数の世帯に売るような動きもありますが、日本では今のところ難しいでしょうね。一方で、小さい住宅は安い分だけ売りやすいかもしれませんが、市場は小さいでしょう。
また、あまり個性的な建物も、売りにくくなる可能性があります。建築作品として価値が高くても、不動産としては買い手が限られてしまうからです。そういう意味では、古民家なども同じ。人気があっても、お金が出せる人は少ない。マーケットが小さい分、売り方に工夫が必要でしょう。
―― 中古では、建物の耐震性や老朽化に不安を感じる人も多いと思いますが。
中城 それは、現行の取り引き制度にも原因があります。
日本では、宅地建物取引主任者が物件の情報を持ち、売買契約もローン申し込みもすべて担うのが一般的。ワンストップで便利ではありますが、宅地建物取引主任者は、必ずしも建築や法律の専門家ではありません。買い主が建物の品質に不安を感じても、契約書の条文に疑問を感じても、責任ある回答は望みにくい。将来的には、建築士や行政書士、ファイナンシャルプランナーなど、各分野の専門家がサポートしていくべきでしょう。
アメリカでは“インスペクション”と言って、建築のプロに頼んで、建物の耐用年数やリフォームの可能性などを調べてもらう仕組みがあります。日本でもインスペクションを手掛ける会社が出てきていますから、利用するのもいいでしょう。
ただ、アメリカではインスペクションを行う権利が保証されていますが、日本では売り主に断られればそれまでです。消費者を守る仕組みがぜひ必要ですが、実現は少し先になるかもしれません。
―― 今後は、中古住宅も耐久性や耐震性などの品質が評価されるようになるでしょうか。
中城 買う人にとっては、その家をどれだけ使い続けられるかが大事でしょう。それが価格に反映されるようになれば、売るときにも大事なポイントになります。ただし、そのためには品質の良しあしを証明する手段が必要です。
そこで、学識経験者と関連業界の方々とで協議し、仕組みづくりとその普及を目指しているのが、住宅履歴情報“いえかるて”です。
“いえかるて”とは、住宅の設計、施工、維持管理、権利及び資産などに関する情報のストックを指します。いつ、だれが、どのように新築や修繕、改修・リフォームなどを行ったかを記録した、住まいの“履歴書”といってもいいでしょう。こうした履歴情報が残っていれば、売買時の資料になるだけでなく、次のリフォームや修繕の計画にも役立ちます。
既に、税制などの優遇がある“長期優良住宅”の認定を受けるには、“いえかるて”の整備が義務づけられています。
―― 品質が価格に反映されるようになれば、建物のメンテナンスやリフォームにも取り組みやすくなりますね。
中城 中古住宅を買った人が、自分の暮らしに合わせて自由にリフォームできることが大事ですから。おおよそ500万円もかければ、かなりのレベルアップが可能です。立地条件がよく、建物の質も高ければ、いざというときに売りやすいでしょう。
今後は、最新の技術がリフォームに生かされるようになるはずです。中古を再生することで、新築と変わらない、最先端の住宅機能が手に入れられるようになるでしょう。
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大阪府行政書士会 旭東支部所属 (大阪市都島区・鶴見区・城東区・旭区) 東洋法務総合事務所の B l o gへようこそ。
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