環境省の「地熱発電事業に係る自然環境影響検討会」(座長・熊谷洋一東京農大教授)は第2回会合で、7月と8月に行った国内地熱発電所4カ所の現地調査結果報告と地熱発電事業に関する専門家からのヒアリングを行った。環境規制強化や周辺温泉地からの反発で、地熱発電事業は、この12年間新規設置がなかった。ただ再生可能エネルギーの利用拡大へ新たな法律が26日に成立することを踏まえ、太陽光発電や風力発電など新規設置構想が東日本大震災の被災地を中心に相次いでいた。同省は、検討会の結果次第では規制緩和で地熱発電事業の拡大を後押しする。
17日の第2回会合では、東北の澄川地熱発電所と大沼地熱発電所、九州の山川発電所と大霧発電所の計4カ所の周辺樹木の植生状況や景観、取水など環境影響について報告。現地調査4地区の環境影響は、おおむね良好と評価だった。このほか、東京環境工科専門学校の幸丸政明校長や、日本自然保護協会の辻村千尋氏、九州電力の緒方康弘地熱グループ長が、自然保護の考え方、自然保護上の問題点、自然環境保全にかかわる取り組みと影響軽減措置について考え方を説明した。また、とりまとめの考え方として、景観や生物多様性など自然環境に及ぼす影響と対策のほか、▽資源調査▽建設工事▽操業――の各段階での検討事項抽出の必要性が提示された。
検討会では今後、海外現地調査や実現性の高い影響軽減措置と効果、環境保全技術などを検討した上で、11月下旬には自然公園法の通知見直しに向けた基本的考え方をまとめる予定。検討結果は、環境省審議会委員会に提示、地熱発電事業の拡大へ向けた法制度の運用見直しにつなげる。
地熱発電は、地下の熱資源まで井戸を掘り、地上に上がってくる蒸気でタービンを回し発電するのが一般的。現在、事業用で13発電所、自家用5発電所で認可出力は計約54万kW。ただ掘削から設備設置まで時間がかかるほか、亜硫酸ガス発生などで周辺樹木の立ち枯れなど環境影響が過去に指摘されていた。同検討会では、技術の進歩や既存の地熱発電事業に伴う自然環境への影響や軽減対応などの現状と効果を検証し、最終的には新規の地熱発電事業の制約となっている自然公園法通知の見直しにつなげるのが狙い。既に昨年、環境相試案として、地球温暖化対策として浮上した再生可能エネルギー拡大政策で地熱発電量を現行の約3倍以上となる171万kWまで引き上げる考え方が示されていた。
26日の参院成立が確実視されている再生可能エネルギー法案に対する議論でも、「稼働まで時間がかかる地熱発電事業の拡大には、時限立法ではなく恒久法が必要」との声が自民党内から強くあった。
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