「敷地前面の道は2項道路ではない。従って敷地は接道しておらず、建築不可だ」
京都市から2006年8月、こう指摘を受けた積和不動産関西コンサルティング営業部の中井雄次氏は一瞬、耳を疑った。前年の05年12月に市役所で、市内の道路種別を確認できる道路縦覧地図を閲覧して、敷地が2項道路に約6.7m接していることを確認。現実に沿道には何軒も住宅が建っていたからだ。
同社は05年11月ごろ、敷地所有者から依頼を受け、市内の不動産会社への売り渡しの仲介に当たっていた。敷地所有者は既に不動産会社と約3000万円で売買契約を締結。300万円の手付金を受け取っていた。もはや後戻りできない段階になってからの突然の通告。売り主と買い主に、敷地が2項道路に接していると説明していた中井氏の面目は丸つぶれだ。
市の担当者は、「新たな事実が判明したので、道路縦覧地図を訂正した」と言う。怒りが収まらない積和不動産関西と土地所有者は09年6月、京都市を相手取り、売買契約締結のために要した費用など、合計約1210万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴した。
裁判の過程で市は、道路縦覧地図に誤って記載していたことを認めた。同地裁は11年3月、市側が正確に情報を記載すべき義務に違反したと認定し、市に約150万円の損害賠償を支払うよう命じた。
このように判決は原告側の勝訴となったが、事件の背景を探っていくと、京都市側の単純な事務ミスとは片付けられない、複雑な問題が横たわっている事実が浮かび上がった。いわゆる「2項道路」問題が、このケースでも大きな影を落としていたのだ。
日経アーキテクチュア2012年2月10日号の「突然の未接道扱いで建築不可に」では、敷地と問題の道の関係を示すイメージ図も掲載。2項道路における「個別指定」と「包括指定」の違いや、特定行政庁による指定道路の見直しの現状を解説している。
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