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日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームの内容を知ることで得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2012年4月号に掲載した内容の一部を紹介します。


 リフォーム会社のA社は、築30年を超えるBさん宅の大規模リフォームを約500万円で請け負った。単板だった窓ガラスは複層に替えた。工事の後、「これで空調の効率がよくなる」と満足そうなBさんに、A社の営業担当社員は、「冬場の結露がなくなる効果もある」と説明した。

 リフォームした時期は暑さが残る9月ごろだった。翌年1月のある日、BさんからA社の社員に電話がかかってきた。「結露がなくならないぞ。どういう訳なんだ」

冬の室温が32℃

 A社の社員は首をかしげながらBさん宅を再訪して驚いた。結露した窓のある部屋は暖房で室温が32℃に達し、加湿器もフル稼働していた。

 寒がりのBさんにとってはこれが冬季の通常のライフスタイルだったが、リフォームの打ち合わせや工事のときは、まだ暑い時期だったため話題にならなかった。

 窓と結露に関するLIXILの試算によると、例えば屋外の気温が2℃で室温32℃の場合、特に断熱性に配慮していない単板ガラスの表面温度(室内側、以下同じ)は中央部で11℃になる。この条件で室内の湿度が23%に達するとガラスの下端で結露が生じる。28%以上になると中央部も結露する。単板の内窓を加えると中央部の表面温度が24.3℃に上がり、結露が起こりにくくなる。それでも湿度が54%になると下端で、64%以上に達すると中央部でも結露が発生するという。

 A社の社員はBさんに結露の仕組みを説明し、断熱性能を向上させても室内があまりに高温多湿になれば結露を防ぎ切れないことを伝えた。Bさんは納得して、「仕方のないこと」と受け止めた様子だったという。

 A社の役員は、「内窓を設置すれば結露を抑えられる可能性があったが、当時、まだあまり普及していなかったため価格が高く、取り付けを提案するのはためらわれた。Bさんが結露の原因を理解してくれてほっとした」と振り返る。

 A社はこれ以降、断熱リフォームの顧客には必ず着工前に冷暖房の設定温度や加湿器の有無などを聞いて、それらがリフォームの効果に与える影響を説明するようにしている。同社の役員は、「工事だけで結露を確実に解消できるようなことを言って、顧客に過度の期待を抱かせてはいけない」と自戒する。

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