日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームの内容を知ることで得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2012年5月号に掲載した内容の一部を紹介します。
2011年末、中部地方のある地域に建つAさんの自宅で、屋根に載せた太陽光発電パネルからの落雪によって、自動車のワイパーと郵便受けが破損する事故が起こった。Aさん宅は住宅会社が太陽光パネル付きで販売した分譲戸建て住宅で、11年1月に引き渡されたばかりだった。
Aさんが住んでいるのは、年に何日か雪が降り、積雪も生じる地域だ。この冬は全国的に平年より降雪量が多く、平均気温が低かったため雪が積もりやすかった。事故への補償を求めたAさんに対し、住宅会社のB社は「天災による被害だから当社に責任はない。加入している住宅総合保険を利用してほしい」と告げた。
しかしAさんは納得できず、「郵便受けを設置したのもB社だ。雪が落ちる箇所に設置した責任があるのではないか」と、住宅リフォーム・紛争処理支援センターに相談。同センターの回答は、「天災による被害とは考えにくく、B社に責任が生じる可能性がある」という趣旨だった。
不法行為となる可能性
本誌はこの件について、建築関連の紛争に詳しい弁護士の日置雅晴さんに見解を聞いた。
太陽光パネルは滑らかなガラスで覆われ、一般的な屋根材よりも明らかに落雪しやすい形状だ。パネル特有の落雪リスクは最近、国民生活センターや防災科学技術研究所といった公的な機関が広く告知している。
日置さんはこれらを根拠として、パネルからの落雪は天災とは言えず、そのリスクへの対策は住宅会社の責務になるという見方を示した。
建築基準法や住宅品質確保促進法が、太陽光パネルの落雪対策を住宅会社の義務と定めているわけではない。しかし日置さんは、「住宅会社が太陽光パネルを自社の商品である住宅の一部分と位置付けている以上、パネルの安全対策を講じる責任も負う。標準仕様でもオプションの場合でも同様だ」としている。
安全対策が不十分だったために事故が起こった場合、住宅会社は民法上の不法行為責任を負う可能性があるとするのが日置さんの見解だ。
では、住宅会社はどのような安全対策をとればよいか。日置さんは、「パネルからの落雪を予防、または軽減する。あるいは雪が落ちる箇所への人の立ち入りや物の設置を制限するなどして、被害を防ぐ措置が必要だろう」と述べている。
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