Archive for » 7月 11th, 2012«

国土交通省の建設産業戦略会議(座長・大森文彦弁護士・東洋大教授)は10日、「建設産業の再生と発展のための方策2012」をまとめた。昨年6月に策定した方策2011を深化させるとともに、東日本大震災を踏まえた新たな方向性を加えた計5分野の方策を抽出。人材や企業を適切に評価する姿勢をこれまで以上に鮮明にし、CM(コンストラクション・マネジメント)方式といった新たな事業ニーズに対応した契約方式の確立や、海外受注高も現行目標を見直し20年度に2兆円以上を達成する方針を打ち出した。

                    
 建設投資の減少に伴う受注競争の激化は、建設業許可業者数が減少する一方で、就業者の営業職が増加傾向にある状況からも推察でき、大森座長も「中核業者に営業マンが偏る状況は、産業として好ましくない」との考えを示した。国交省も建設生産システム全体の中で人や企業を適切に評価し地域社会の維持や人材確保に焦点を当てる姿勢を鮮明にした。

                       
 方策では、人を大切にする施工力のある企業が『優良な建設企業』として評価される競争環境のあり方に言及。その際に法令順守と不良不適格業者排除の徹底だけでなく、将来的にも担い手となる評価のあり方も検討事項に挙げた。背景の一つとして、各等級の1者当たりの契約件数(10年度)を見ると、A、B、Dの各ランクは00年度の3−4割程度にまで減少しているものの、Cランクは7割程度にとどまり、地域社会の維持に資する事業の多いCランク工事で競争環境が厳しくなっていることが挙げられる。

                  
 優良な建設企業の評価については、方策2011に盛り込んだ業種区分の見直しの際にも考慮すべき視点とするよう求めている。
 専門工事業者も同様の観点から評価の仕組みを導入し、公共工事の発注者だけでなく、民間工事でも元請企業が下請契約の選定に活用することを視野に入れるべきと指摘した。

                   
 技能労働者の処遇改善の取り組みでは、方策2011の社会保険未加入対策をさらに徹底するとともに、保有する資格や工事経験などの情報を蓄積して『見える化』する仕組みの構築を検討していく。

               
 一方、発注者側のマンパワー不足を補うために確立する『日本型CM方式』は、大手ゼネコンの活躍に期待を寄せる声も多い。被災地で試行するモデル事業の運用を踏まえて一般的に適用できるよう標準化することを視野に入れるとともに、経営事項審査における完成工事高への計上や監理技術者の配置要件など入札契約制度、建設業法での取り扱いを検討していく。

                     
 海外展開も、現行の新規年間海外受注高1兆円以上という目標が11年度で達成見込みであることから、20年度に2兆円以上という目標に改めた。大手建設企業だけでなく、地方・中小企業も海外へ進出できるよう、成功事例を共有化するための場を設けるなど、多角的に支援していく考えだ。

                  
 大森座長は「(方策2012案は)抽象度の高い方向性となった。今後は案をベースに制度化を検討し、実行していくことになる」と語った。

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