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11月から始まった社会保険未加入対策の取り組みが、下請けの小規模事業者に影響を与え始めた。魅力ある産業構築に向けて建設産業界にとって異論のない「社会保険未加入対策」だが、小規模事業者や一人親方は自らの対応が決まらない中で、元請けを中心に保険未加入企業・技能労働者の排除を急速に進めていることに、強い不安を抱き始めている。こうした対策に直面する未加入企業や未加入者は、どう向き合おうとしているのか。

                      
 未加入対策の対象となっている社会保険は、医療保険、年金保険、雇用保険の3保険。ここで問題となるのが、建設事業者の55%を占める従業員5人未満などの小規模事業者だ。建設国保加入者は健康保険(協会けんぽ)に加入しなくても構わないという適用除外を受けているが、行政、元請けに周知徹底されていないことで、現場から排除されるケースが出始めている。

                       
 また、5人以上の小規模事業者では、建設国保ではなく協会けんぽへの入り直しと、厚生年金加入の強制適用を避けるため、意図的に常用技能労働者の一部を個人事業主の一人親方にさせる問題も指摘され始めた。

                     
 一人親方などが加盟する全国建設労働組合総連合(全建総連)は5日、建設国保の適用除外をすべての5人未満事業所に認める運用緩和や、厚生年金加入を任意選択にすることなどを骨子とする要望を決議、国会議員への陳情を行った。

                      
 全建総連の5日の会合では、ある一人親方が「職人は技術を高めるために企業を渡り歩き、結果的に収入を上げる。だから望んで一人親方になった」とした上で、「いま、従業員6人の企業で、16歳の一人親方が存在している。本人は社員のつもりだが、特別労災保険に加入している。こんなあり得ないことが起き始めている」と、技能に裏付けされない、形式上の“一人親方”が増加しつつあることに強い懸念を示した。保険加入の原資になる法定福利費を別枠で確保できない現状では、厚生年金の強制負担を避ける小規模企業が今後も増加することに警鐘を鳴らした形だ。

                            
 事業主でありながら労働者でもある一人親方は、労働基準法上、労働者ではなく労災保険には加入できない。そのため、一人親方が加入できるよう設けたのが特別加入制度。既に特別労災保険加入人数も、直近の2010年に36万8046人と20年間で3倍に増加しており、未加入問題がこの増加に拍車をかけかねない。

                
 このほか全建総連では、小規模企業の経営者が、「わたしは(保険未加入の)不良不適格業者の一人。いまは企業を維持するのに精一杯。職人にも家族がおり、保険に入るために、職人を切って(解雇して)本当にいいのだろうか」と苦しい胸の内を打ち明けた。

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